THE FOREVER YOUNG

私は結婚を機に、3月末で丸6年続けた看護師の仕事を辞めた。

これから2ヶ月くらいは仕事せずに少し気楽に過ごしたいと思っていたので、好きな事をとことんしようと思った。

 

そして昨日、THE FOREVER YOUNG(通称 エバヤン)を観に、久しぶりにライブハウスに行くことにした。

昔、といっても5年前くらいまでは、本当にしょっちゅう、自分でも呆れるくらいあちこちのライブハウスへ行っていたが、最近はすっかり行くこともなくなってしまっていた。

実に1年半振りのライブハウスだったこともあって、少しドキドキしていた。

 

入った瞬間から胸に込み上げてくるものがあって、地下のちょっと汚い廊下とか、薄暗い照明とか、ドリンク引き換えのチケットとか、「お目当てのバンドはどちらですか?」という問いかけとか、ズンズン胸に響く重低音とか、そういうのが全て懐かしくて、心地よかった。

「ああ、ここは私が本当に好きな場所だ」と泣くのを堪えなければいけないほど、自然と目頭がじんわり熱くなった。

 

エバヤンはいつも泣いてしまう。

 

あんたは頑張ってるよって認めてくれてるような気がして、イントロだけで衝動的にわーっと涙が出てくる。

「涙が出る時って言うのは、苦しい時も理不尽な時も、頑張って頑張ってて、でもそんなの誰にも認めてもらえなくて、心の中の器が溢れそうになってる時に、そんな時に誰かに心をノックされた時、その時に涙が出るんだ。」というMCで、まさに心をノックされ、またわーっと涙が溢れて止まらなくて、それからずっと泣いてしまった。

 

ライブ終わりに家に帰り、布団に入った。

耳鳴りがもわーんと続いていて、目を閉じても今日見たあの光景がまぶたの裏に焼き付いていて、「今日行ってよかったなー。」と思いながら、いつのまにか寝てしまっていた。

 

そして不思議な夢を見た。

夢では、仕事を辞めてからの生活を第三者的目線で見ていた。

カラオケボックスへ行ったり、飲み会をしたり、側から見たら楽しそうにしている私を眺めていた。

 

そんな中で、両親に

「なんで看護師辞めちゃうの?」

「資格があるのにもったいないよ。」

「働いたらそれなりの収入になるのに。」

と、普段周りから言われているような事を言われた。

(※ちなみにホンモノの両親は普段そんなこと言ってくるタイプではないよ)

 

カッとなった私は少し拗ねながら

「だって、分かんないんだもん。

自分がやりたいことが分かんないんだもん。」

と言っていた。

 

両親は黙って聞いていた。

 

続けて、

「看護師になりたいって言って、看護学校まで行かせてもらったけど、私、看護師って仕事を好きになれなかった。」

と。

「だってほら、病棟の中、認知症ばっかりじゃん。

夜中に『おーい、おーい』って声が聞こえて行ってみたら点滴抜いてたとか、転んでたとか、それ見つけたらインシデントレポートでしょ。

点滴嫌なら治療なんかやめて家帰れって思うけど、そうはいかない。

点滴抜いて血まみれになったパジャマとかシーツを交換するにも『やめろー!何すんだー!』って大暴れして殴る、蹴る、暴言を吐かれる。

手を引っ掻かれながら、腕も傷だらけになるんだけど、こちらは「ごめんなさいね、すぐ終わりますからねー。」と笑顔で対応し、決して手を出してはいけない。

食事も経口摂取できるようにって介助するけど、口から吐き出され、顔めがけてブーッ!て吐かれたり、スプーンとか皿とか投げられることなんてしょっちゅう。

 

認知症の患者家族なんて自宅には連れて帰らないし、そのくせ文句ばっかり言ってくる。

『抑制するな』『家ではご飯食べてたのに、入院したら食べれなくなったからこれは病院の責任だ』『家では一人でトイレに行っていたのに、病院で寝たきりにさせられた、こんなんじゃ家に連れて帰れない』そんなことばっかり言われる。

 

『ご自宅が難しいようならば、施設も探していきましょうね』って言っても全然動かない。

だって施設に入れたら月20万くらいかかるけど、病院に入れとけば後期高齢者だから医療費はその何分の一で済むから。

 

社会の嫌なところとかクソみたいなところを見て絶望しか感じないよ。

私のやってることって何か意味あるのかな。

 

結局どんなに頑張ってもこの人たちは元気になって家に帰ることもなく、ありがとうって言ってくれることもないんだーって、毎日毎日徒労感に襲われながら働くんだよ。

 

それに、女の社会だから、常に周りに気を遣わなきゃいけないのも嫌。

「あの子は自分の仕事しかしない」とか「全然気が利かない」とか陰でグチグチ言われる。

休憩室なんて悪口大会だよ。常に誰かの悪口言ってないと気が済まない人ばっかり。

自分が仕事したくないからって、何か頼まれたらすぐ機嫌悪くなる人もいるし。

 

こんなことをやってるうちに、ぽっきりと心が折れちゃった。

『こんなことしたくて看護師になったんじゃない』って思う。

 

でも、周りの看護師たちは割り切って上手にこなしてる。

 

みんなにはできるのに、私にはそれができなかった。

 

 

 

だから、それが一番辛かった。」

 

 

 

 

そう言った時点で目が覚めて、気がつくとうわんうわん泣いていた。

 

時計を見たら夜中の3時だった。

 

 

 

 

ああ、辛かったんだ、しんどかったんだ。

 

 

 

自分でも自分の気持ちをちゃんと分かってなかった。

 

そして、周りから

「看護師なんだからすぐ就職先見つかるよ」

「これから先お金かかるんだから、子供いないうちに稼いどかないとね」

と何気なく言われていた言葉も、実は心のどこかに引っかかっていて、うまく消化できていなかったことにも気がついた。

 

それからもしばらく嗚咽が止まらず、目が腫れるまで泣き続けた。

 

夢の中でこんなにもスラスラと言えたことに驚いた。

きっと昨日のライブでエバヤンに心のドアをノックされて、ドアを開けることができたんだと思った。

大袈裟かもしれないけど、多分そうだと思う。

 

心の中に、ぐるぐる巻きにして人目に付かないようにこそっと閉まってた"本心"を、引っ張り出して、私の代わりに捨ててくれたような感覚だった。

 

 

 

夢の中でも泣くなんてことあるんだね。

 

目が覚めて僕は泣いた。

銀杏BOYZかよって、ちょっと笑った。

そういえば今日のMCでも銀杏BOYZの話してたな。

 

ありがとう、エバヤン。

肩抱かれたわー。

 

ちょっとひと休みして頑張ります。