綱渡り
その翌日、トイレに行って立ち上がった瞬間、生理のようなどろっとした経血が垂れてくる感覚があり、トイレットペーパーで拭き取る。
すると、コアグラ様の3,4cmの塊がそこにあった。
「どうしよう...赤ちゃん出たかもしれない...」
一気に血の気が引いた。
たまたま休みだった旦那に血の塊を見せると「病院行こう。送ってくから。」と冷静に対応してくれた。
動悸が止まらなかった。
どうしよう。どうしよう。どうしよう。
病院に電話する手が震えた。
病院からはとりあえず診察するのですぐきてくださいと言われ、塊もジップロックに入れて持っていった。
「うーん。そうですか。内診しましょう。」
内診台に上がる。
いつもはワクワクしているけど、今日は祈る様な気持ちで、生きた心地がしなかった。
「あ、赤ちゃん大丈夫だね。元気。」
「ここ。心臓も元気に動いてる。」
胎嚢の中で心臓をピコピコ動かしているのが見えた。
「良かった...」
物凄いため息が出た。
良かった。良かった。無事だった。
そのあと先生からは「まあ、出血あるからまだ安心はできないね。でもね、流れちゃう時は流れちゃうから。それは赤ちゃん次第だからしょうがないことだからね。」と言われる。
助産師さんから「良かったね。一人で心配だったよね。不安だったね。」と背中を撫でられた。
今まで我慢していたものがわーっと堰を切ったように溢れて、エンエン声を出して泣いた。
不安だった。心配だった。
でも大丈夫だった。
綱渡りの妊娠生活。
こんなはずじゃなかったと思った。